欧米からアジアへ---アジアは、「世界の成長センター」になることは確実です。ですが、成長の裏にはひずみも伴います。この地域は政治的、安全保障的な不安定要因を多く抱えています。その多くは中国の台頭、米国の威信低下に起因する、と言ってよいでしょう。もっとも現実を見れば、解決困難な国内問題を抱える中国が、経済規模をさらに拡大するにしても、国際社会で支配的なヘゲモニーを取るところまでは至らない、と感じます。
米国、中国と日本、そしてかつてアジアの国々の宗主国だったヨーロッパ諸国の思惑がからんだアジア。そこに複雑な構図が広がっています。アジア全体の中から東南アジアを抜き出して考えても同じです。言語、民族、宗教が違う国々が集まっています。この地は、数々の戦争、紛争、国境移動を繰り返してきました。その歴史から生まれた不信・猜疑の刻印は、それぞれの国が持っています。そして同時に一つの国の中に、奥深い文化、伝統が連綿と続いています。
「アセアン(東南アジア諸国連合/ASEAN)は一つ」ではありません。「アセアンは一つ一つ」と言われているのも、そうした歴史に由来しています。しかし、各国間の壁を乗り越え「アセアン」として団結していこう、という大きなエネルギーも見られます。そうしたアジアをペンで解剖していきたいと思います。アジア取材歴35年以上のベテランスタッフが執筆します。
<<執筆者紹介>>
中村 浩一郎
1950年 東京生まれ。
1974年 早稲田大学卒業後、新聞社に入り、
ソウル、バンコク特派員を歴任。
小堀 新之助
1955年 群馬県生まれ。1979年 千葉大学卒業後、
テレビ局で報道番組制作に従事。
現在、バンコク、クアラルンプールを巡回している。