本文へスキップ

アジアに密着 Asia-Wach Network

         



経済制裁下の国際商品展覧会(1)  (2014年5月27日)

 国連の経済制裁は依然として続き、緊張緩和の方向に進むかと期待された南北関係には好転の気配はなく、北朝鮮経済は厳しい状態だ。このなかで、第17回国際商品展覧会が、5月12日〜17日に平壌で開催された。
 外資導入、貿易で経済難を打開したい思惑があるだろう。開幕式には姜錫柱副首相、李竜男貿易相らが出席し、「展示会が地域経済の発展を推し進める契機になることを期待している」と述べた。

 日本企業は経済制裁で対北朝鮮貿易を止めているため参加していないが、北朝鮮のほか中国、台湾、英国、ドイツ、キューバ、イタリア、マレーシアなどの国・地域から310社以上が参加した。電子製品や日用生活用品、食品などが出品され、展示ブースでは熱い商談が行われていた。

 国際商品展覧会に初めて参加した台湾・キング・トニー社(King Tony Tools CO.LTD)のビンセント・ライ氏(Vincent Lai,Marketing Division Vice General Manager)に質問し
た。
Q:どのような経緯で展覧会に参加したのか?
A:(世界各地で催される展覧会への参加を仲介する)専門会社を通じてこの展覧会に参加しました。
Q:参加の目的は?
A:わが社は中国、フランス、スペイン、ドイツ、オランダ、アメリカなどに事務所を置き、世界120ヶ国に製品を販売しています。さらに輸出先を探すため平壌国際商品展覧会に来ました。
Q:成果は?
A:開幕初日からわが社との協力を積極的に呼びかけてきた会社もありました。すでに10社以上と名刺交換をしました。いま、展示しているサンプルの工具はほとんど売り切です。わが社の製品を購買、使用しようとするお客さんはたくさんいます。今回の出店目的はほとんど達成できました。平壌国際商品展覧会は非常に良い展示会です。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

商品展覧会(2)   (2014年5月27日)

 北朝鮮の最先端技術に関しては、情報不足の面がある。メディアの偏見が強い日本からみると、軍事的には強力な部分があっても国民は食料不足に悩まされ、日常生活面での最先端テクノロジーは不十分との先入観がある。しかし、北朝鮮はIT技術の育成を熱心に進めてきた。故金正日総書記は、中国を訪問した際には必ずコンピューターやハイテク産業を視察している。先端技術で、経済回復をはかろうとする狙いがある。
 
 第17回国際商品展覧会で人気を集めた商品の一つがタブレット端末
「サムジヨン(三池淵)」だ。北朝鮮には3種類のタブレット端末
「アリラン」、「サムジヨン」「アチム(朝)」がある。2012年に発売され平壌市内の販売店では外国人でも200ドル前後で購入できる。
前回同様、今回も人気商品になっている「サムジヨン」を出品した、新興ITサービスセンターのアン・グァンリョン総合部員(40歳)に話を聞いた。

Q:「サムジヨン」の人気は?
A:人気は高いです。いま、わが国では各種のタブレットPCが製作、販売されています。前回の展覧会にもいろんな種類のタブレットPCを出品しました。「サムジヨン」は最も人気の高い製品でした。多くの使用者は「サムジヨン」の性能、品質を高く評価してくれています。「アリラン」などは「サムジヨン」に比べると人気は落ちます。

Q:「サムジヨン」の販売状況は?
A:今回出品したタブレットは平壌市内でも販売している製品です。
学校の友達、職場の同僚から「サムジヨン」の評判を聞き、会場を訪れた客が多いです。最初の日にも100台が完売になりました。

Q:新製品の開発も計画しているのか?
A:弊社では「サムジヨン」の性能向上に力を注いでいます。
その中で新製品の開発も進めています。いま販売中のタブレットの生産を維持しながら、より発展した製品の開発、生産を目指しています。
目標は、国際的な市場でも競争力をもつ製品の開発、生産です。

Q:新製品の出品はいつごろになる?
A:いま、開発の技術的な問題は解決しています。1〜2カ月後には(新製品の販売)できると思います。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


北朝鮮の義務教育  (2014年4月5日)



 4月1日、北朝鮮でも新学年度がスタートした。新入生は緊張と期待に膨らむ胸に赤い花をつけ、入学式だけは親と一緒に学校へ行く。入学式に付き添った親が教室では後ろから我が子を見守る。その光景は日本とそう変わらない。

 今年の入学式は例年と少し違って親たちの関心が高いという。新たな12年制義務教育がスタートするからだ。これまで、北朝鮮では11年制義務教育(幼稚園1年、小学校4年、中学校6年)をとっていたが、小学教育を1年増やし5年制にした。中学(中等)教育も初級と高級に分けた。つまり、幼稚園の1年を日本流の小学1年とみると、小学6年、中学3年、高校3年となり、高校までが義務教育ということだ。日本より3年も長い義務教育を施すことになる。北朝鮮が人材育成に相当な力を注いでいる証といえる。

 「朝鮮のために学ぼう!」。このスローガンは殆どの学校に掲げられ、児童、生徒はこの言葉を肝に銘じ、勉強しているに違いない。ある小学新入生(女子)は入学式で「これから熱心に勉強してりっぱな科学者になり、金正恩元帥を喜ばせる」と話した。またある母親は「うちの子は音楽が好き。りっぱな芸術家に育て金正恩元帥のご配慮に報いたい」と語る。
 自分のためでなく、国家や指導者のために学ぶ、学ばせる。外国人が違和感を持っても北朝鮮の教育方針は明確だ。
※北朝鮮義務教育の歩み
 ・1956年8月、アジアで初めて初等義務教育を実施
  (4年制―小学校4年)
 ・1958年11月1日、中等義務教育を実施
  (7年制―小学校4年、初級中学校3年)
 ・1967年4月、中等一般教育と基礎技術教育、教育と生産労働を
  結合させた9年制技術義務教育の実施を決定
  (9年制―小学校4年、中学校5年)
 ・1972年9月、世界で初めて全般的11年制義務教育を実施
  (11年制―幼稚園1年、小学校4年、中学校6年)
 ・2012年、最高人民会議第12期第6回会議で12年制義務教育実施を発布

                        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


北朝鮮式スポーツ選手強化方法  (2014年4月4日)


北朝鮮女子サッカーチーム
  2020年の東京オリンピックを控え日本ではスポーツ選手の強化策が課題になっている。2011年の世界各国の年間強化費を調べてみると、ドイツ263億円、中国304億円、韓国149億円などに対して日本は185億円。この数字は、「名誉」だけでは選手の奮闘を促すのは難しく、やはり選手への「投資」が必要、ということを物語る。

 北朝鮮でも同じようだ。北朝鮮の中央テレビを観て感じたことだが、北朝鮮のドキュメンタリーは最高指導者を称賛する内容が多い。生産部門や軍関係の現地指導を中心としたドキュメンタリーの中で、最近は金正恩第1書記がスポーツ部門を指導する映像も増えてきた。
 去年(2013年)の国際大会で収めた成果を誇示し、さらなる躍進を促すのが狙いだろう。「国家級受勲」という名誉とともに物質的報酬にも重点を置き、選手の意欲を刺激しているドキュメンタリーが目立つ。
 第52回世界卓球選手権大会で優勝したキム・ジョン、キム・ヒョッボン選手には乗用車と高級マンションが贈られている。これが北朝鮮式のスポーツ選手刺激方法だ。

 去年、北朝鮮は70余りの国際競技に参加している。北朝鮮の発表では金164、銀129、銅97のメダル獲得となっている。北朝鮮式スポーツ選手刺激方法がこれからどのような結果を示すか、今後の国際大会に注目したい。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


北朝鮮の食糧問題と農業政策   (2014年3月31日)
 

  金正恩第1書記は、「新年の辞」で「党内に潜んでいた宗派の汚物を除去…」と述べ、国内態勢の引き締めをはかった他、対外政策では対南関係改善の姿勢が注目を集めた。しかし、経済関係者が関心を寄せたのは、「農業部門が先頭に立って革新ののろしを高く掲げるべきだ」という発言だ。

 食糧問題の解決を「新年の課題」と位置づけたのは異例のことである。さらに、「農業部門は社会主義守護戦の最前線だ」という表現も今年初めて登場した。食糧問題を今年中に解決しようとする、強い決意の表れととらえてよい。
 2月には北朝鮮で初の「農業分組長大会」が開催された。これまで全国農業大会は数回開かれたことがあるが、協同農場の最末端組織の責任者である分組長を集めて会議を開くのは今回が初めてだ。この大会を契機に今年から分組管理制の実施がさらに強化されると見られ
る。
 さらに、分組管理制が家族単位に変更され、農民の生産意欲を刺激するために、現物分配制を見直しするとの指摘もある。今年、北朝鮮は食糧問題解決のため、これまで余り手を付けてこなかった農業政策に大胆に取組む予感がする。

                       (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


Asia-Watch Network

   Bangkok THAI
   Kuala Lumpur MALAYSIA