本文へスキップ

アジアに密着 Asia-Wach Network

         



北朝鮮の「世界エイズデー」        (2014年12月25日)


国保健省国家衛生検閲院 
チュ・ミンニョさん

 12月1日は「世界エイズデー」である。世界保健機関(WHO)が、エイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別、偏見の解消を目的
に、1988年に制定した。
 今年もこの日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動が行われた。北朝鮮も例外ではない。

 平壌の人民文化宮殿ではWHOの代表と駐朝外交団の代表らが参加して記念行事が行われた。今年はエイズだけでなく、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱にも関心が集まった。
 保健省国家衛生検閲院の検閲員、チュ・ミンニョさん(58歳)に話を聞いた。

―エイズとエボラはどんな関係にありますか。
 チュさん:ヒト免疫不全ウイルスであるHIVとエボラ・ウイルスはいずれもリボ核酸ウイルスです。麻疹(はしか)やインフルエンザのような伝染病とは異なり体液を通じて感染します。
 エイズとエボラの相違点は、エボラ は病気の症状がある患者を通じてのみ感染しますが、HIVは、感染はしたもののその症状がない人を通じても伝播するということです。
 しかし、エイズもエボラも恐ろしい伝染病であるということでは共通です。

―ボラを予防するためにどんな対策が講じられていますか。
 チュさん:わが国にはエイズ感染者やエボラ患者はいません。だからといってわが国にエボラが入らないとも限りません。
 数日前のエボラ通報会でも指摘されましたが、この問題はわれわれの体制の安全と人民の生命にかかわる重大な問題です。我々は絶対に袖手傍観(しゅうしゅぼうかん)することはできせん。
 今、世界的にエボラによる死亡者数は顕著に減少しているそうです。しかし、「エボラのない国」を維持するうえで、疾病に対する対応準備を整えるのが重要です。その対応準備というのは、監視能力の強化とともに感染のおそれのある人を識別する検査方法、感染の予防および統制の対策を伴う迅速かつ正確な診断および患者管理システムの確立を意味します。
 保健省国家衛生検閲院は今後も、わが国にエイズとエボラのような伝染病が絶対に入らないよう徹底した安全対策を講じます。そして、世界保健機関をはじめ国際代表部との緊密な協力をさらに強めていくでしょう。

                (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

エボラ出血熱感染防止対策/21日間の隔離と医学的監視  (2014年11月26日)

エボラ出血熱感染防止対策の通知説明会


国家衛生検閲院 パク・ミョンス院長

 エボラ出血熱は、終息の気配がなく拡大を続けている。感染はリベリア、シエラレオネ、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカへと広がり10月末の感染者数は約14,000、死者は5000人に迫っている。極めて致死率の高い感染症だけに世界的な規模の対策が始まっている。
 北朝鮮も例外ではない。“閉鎖的国家”という偏見が強い日本では意外かもしれないが、北朝鮮はアフリカの54カ国全部と国交を持ち、交流の歴史も古い。
 高度の医療設備が整うスペインやアメリカで二次感染が起きたこともあり、北朝鮮はこの程、二次感染に対する警戒措置を朝鮮民主主義人民共和国非常設国家非常防疫委員会の名前で各国外交筋および国際機構代表部に通知した。
 この通知内容について国家衛生検閲院のパク・ミョンス院長に聞い
た。

―:通報内容の要点は?
A:エボラ出血熱ウイルス感染症の防止は朝鮮人にのみ限られる問題ではありません。
 朝鮮を出入りする外国人の協力必要です。朝鮮では現在、海外から帰国するすべての人を21日間隔離して医学的監視を受けてもらっていま
す。この処置は訪朝する外国人も例外になりません。
 今日(11月26日)の通知で、入国するすべての外国人に21日間の隔離と医学的監視を決めました。今回の措置には前例があります。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)です。
 この時も国境を封鎖し、入国者全員に今と同じような一定期間の隔離と医学的監視を実施しました。その結果、周辺諸国での状況は悪化しましたが、朝鮮では一人の感染者も発生しませんでした。
 これは、SARSに対する我が国の措置が適切であったからで、今回のエボラ出血熱感染症防止で貴重な経験となりました。

―:エボラ出血熱の感染対策は国によってバラバラのようですが?
A:エボラ出血熱の感染が収まっている国々に対しては「本当に良かった」と言いたいです。
 ところが、エボラ出血熱の感染がどこでまた広がるのかは誰も予測できません。たとえば、マリでは再びエボラ出血熱の感染が広まっています。
 国連総会である国の代表は、エボラ出血熱感染を「テロ」より恐ろしい、国際社会の敵と言いました。西アフリカの国とノービザ(査証不要)協定を結んでいた国ではこの協定を見直しています。
 また、ある国は国際線の空港を限定し、西アフリカ諸国から入国する人を精密検査し、感染の疑いのある人を21日間、隔離し医学的監視を実施しています。それぞれの国が自国の実情に合わせた措置を講じています。今回の我が国の措置も国際的に見合ったものです。

―:今回の隔離措置で我が国のへの経済的影響や対外活動への支障はないか?
A:今回の措置が社会経済生活において一定の制限を与えかねないことは分かっています。しかし、国家の安全と人民生命の安全のため、防疫対策はより重要な問題ですから、この措置を講じました。

―:今回の対応措置はいつまで続くのか?
A:エボラ出血熱の感染防止に対処した一時的な措置です。世界的範囲でその危険性が少なくなり、より有効的な対応対処が整うなら、それに従うでしょう。いずれにしましても、外国人の活動と便宜は最大限に保障されます。

                (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

科学者・教育者向け高級住宅     (2014年11月26日)




キム・チョルホ博士(左)と
カン・ブンオクさん(右)
 北朝鮮では科学者や教育関係者向けの高級住宅が相次いで建設されている。科学・教育重視政策の表われなのだろうか。金正恩第1書記も何度か建設現場を視察している。

 10月21日には、金策工業総合大学の教職員350余世帯が、専用住宅に入居する様子が伝えられた。「億ション」と見間違えるような高級住宅は、羨ましい限りである。
 場所は平壌市内中心部、風光明媚な大同江の畔(ほとり)で、46階建ての高層住宅である。最近建設された、科学者や教育関係者向け住宅の中でも、今回の金策工業総合大学、教職員向けの住宅は最高級レベルと言えそうだ。
 17階1号に転居したのは、金属工学部学部長のキム・チョルホ博士(53歳)の家族だ。

ーこのアパートにはどんな教員が入居したのですか。
 キム・チョルホ博士:入居した教員はほとんどが院士、教授、
准教授、博士です。年齢別に見ると60歳以上が20%、46歳から59歳までが60%、46歳 未満が20%です。
ー入居した感想は。
 キム・チョルホ博士:全く夢のようです。4人家族で面積が210余平方メートル、居間だけでも6部屋あります。台所は使い勝手がよく、食堂にも高級品が備えられています。椅子の座りごこちは申し分ありません。 バスルームは2つ。40点の真新しい家具が備わっています。さらに地熱による冷暖房システムが導入されて、室温を快適に保つことができるようになっています。すべての生活条件が整えられており、隅々まで配慮が払われています。ベランダには熱線反射ガラスが張られ卓球台が置けるほど広いです。
 施工や備品も私が宿泊した外国の五星ホテルに劣らないと思います。社会主義的栄耀栄華とはこういうものだと実感しました。強盛国家建設のために一層奮闘するという決意を固めています。

 キム・チョルホ博士の妻で、平川区域セマウル診療所で所長を勤めるカン・ブンオク(49歳)さんは新居について興奮しながら次のように説明した。「入居した日は100人以上の人が訪ねてきました。出張で地方から平壌に来ていた人たちは、朝鮮の風習どおりマッチを1箱ずつ持ってきて祝ってくれました。外国人や海外同胞も訪ねてきました。日本に住む海外同胞教育者は、日本なら部屋だけでも1平方メートル当たり1万〜3万ドルはする、このような高級住宅を無料で提供してもらうということは想像もつかない。このアパートを見ただけでも朝鮮の教育重視、人材重視の政策がよく分かると言いました。生活が苦しかった『苦難の行軍』の時期、夫は家族に対して肩が狭い思いをしたものです。あの時、夫が教育者であることを誇りに思えなかったです。今はそれが悔やまれてなりません。教育者の妻であることがこんなに誇らしいことだとは思いも及びませんでし
た」。

 金正恩第1書記は、高級住宅が完成した直後の10月16日に現地を視察している。室内の出来栄えを入念にチェック
し、最上階からの景色に満足感を示したという。そして、「社会主義的栄耀栄華を享受しながら教育活動と科学研究活動を行うことができるようになったとし、教育者が幸せに暮らせるならうれしい限りである」との感想を述べた。

                (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

対日戦、底力の理由                (2014年11月4日)

アジア大女子サッカー決勝

スポーツ科学院 リ・ドンギュ副院長

 韓国・仁川で行われたアジア大会女子サッカー決勝は北朝鮮が日本を3-1破り優勝を飾った。日本対北朝鮮の決勝戦は3大会連続で、前々回の2006年は北朝鮮、前回、2010年は日本が優勝している。
 北朝鮮国内は、快挙を成し遂げたサッカー女子代表に称賛の声が上がっている。決勝戦はテレビ放送された。北朝鮮で「スポーツ博士として知られる」スポーツ科学院のリ・ドンギュ副院長(78歳)は、北朝鮮の強さを次のように分析している。
    --------------------------
ー女子サッカーが優勝した秘訣は?
 試合の運び方が以前と違ってきた。選手が優勝を強く意識している。スポーツ強国建設を進めている金正恩元帥は、これまで何度も試合を観戦し、練習を朝鮮式にすれば、必ず勝つという信念を選手に与えた。

ー朝鮮式とは?
 決勝戦では攻撃と守りの間隔を狭め相手に時間的余裕を与えなかった。常に試合の主導権を持っていた。3点目はゴール前の奥でかなり低い位置からホ・ウンビョル選手がダイビングヘッドで合わせているが、これは難易度の高い動作だ。この技術は、わが祖先の武道の一種類である「平壌ナルパラム(疾風)」の動作を連想させる。

ー北朝鮮女子サッカー展望は?
 1985年から始まった我が国の女子サッカーは猛スピードで発展している。世界的な強豪チームの地位を占めるのは近いと思う。男子サッカーは、未熟な部分もあるが、2014年のU-16アジア選手権では優勝した。男女ともサッカーの展望は明るい。
    --------------------------

 日本と北朝鮮の代表チーム(男子)のFIFAランキング(10月23日現在)は日本の52位に対し、北朝鮮は148位と大きな開きがある。しかし、対戦成績は17戦7勝6敗4引分けでほぼ互角といえる。
 女子サッカーは日本の3位に対し、北朝鮮は11位。なぜ、対日本戦となると力を発揮するのか。リ・ドンギュ副院長は次のように語る。「優勝して共和国旗が掲揚されると私は涙ぐむ。自分は南朝鮮(韓国)慶尚南道馬山市生まれで、父と一緒に日本に渡った。朝鮮民族の悲哀を幼い時から体験してきた。日本帝国主義時代、1930年のベルリン五輪で優勝したわが国のランナーは日の丸を胸に着けなければならなかった。プロレスラーの力道山は朝鮮人であることを自負できなかった。私たちの涙が、対日戦で選手の力になるのだろう」。

        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

スポーツ振興と国威発揚            (2014年11月3日)



キム・グァンシク氏

 北朝鮮は金正恩第1書記のもと、2012年に国家体育指導委員会を発足させ、スポーツ振興に力を注いでいる。第17回アジア大会での金メダル獲得数は11個で参加国中7位は大健闘と言える。

 選手を迎える平壌は大いに盛り上がった。空路平壌に到着した選手を迎えたのは「歓迎専用のオープンカー」。大型トラックを改造したもので、好成績を上げた選手団を乗せ、平壌市内を一周、市民の熱烈な歓迎を受けた。
 「歓迎のオープンカー」を運転したキム・グァンシク氏の熱い思いが届いた。
    --------------------------
ー「オープンカー」を運転した感想は。
 選手を見て涙を流す市民が多っかた。政治・経済的および軍事的圧力と制裁のなかでスポーツ発展をめざしているわが国にとって金メダルの影響力は大きい。
 金メダルを獲得した選手団には、いろいろな恩恵があるだろうが、この新型オープンカーも特色のある歓迎であった。こんな歴史的な体験をできたのは人生の幸運と思う。

ーオープンカーの特別な意味は。
 わが国では最近、文化施設や工場、近代的なアパートをはじめ、新しいものが多く登場している。大型のオープンカーに乗っている選手を見ることで、市民の夢がもっと大きくなったし、夢が現実的になるスピードが高まっている。これこそ、私たちにより大きな希望と喜びを与えてくれた。オープンカーは多くのことを物語っている。
 月桂樹の家で暮らすのが昔からの朝鮮人の素朴な夢であった。選手団が乗っていたオープンカーは、朝鮮の美しい未来を見せる21世紀の月桂樹だ。
    --------------------------
 続いて、アジア大会参加者をねぎらう宴会が平壌の「木蘭館」で盛大に行われた。 まず、崔竜海・体育指導委員会委員長は「選手の活躍が世界中に北朝鮮の尊厳と栄誉を知らしめた」と賛辞を贈った。
 その上で「今回の成功を揺るぎないものとするため、さらなる鍛錬を積んでアジアの覇者となり、北朝鮮の天下無敵の迫力と威厳を大いに発揚しなければならない」と強調した。

 スポーツ振興で国威発揚を狙うのは、前近代的とする見方もある。しかし、日本はじめ先進主要国も金メダルにこだわり、国威発揚の刺激としてきたのは間違いない。

        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

アジア大会で自信をつけた北朝鮮          (2014年10月7日)


アジア大女子サッカー決勝

 韓国・仁川で開催された第17回アジア大会は4日、閉会した。北朝鮮が獲得した金メダルは11個で、 前回(2010年)中国・広州大会の6個を、ほぼ「倍返し」する好成績だった。

 男女の重量挙げでは4階級を制しているが、北朝鮮国内が熱狂したのは女子サッカーだろう。朝鮮中央テレビは放映していた映画を中断し「わが国の女子サッカー選手らが日本チームに打ち勝ち、栄誉の第1位を獲得した」と優勝を報じている。

 今回のアジア大会で北朝鮮の女子サッカーはエキサイティングな試合が続いた。準決勝戦では韓国と対戦。北朝鮮が2−1で勝利した。開催国、韓国の人々は複雑な気持ちで観戦したことだろう。フィールドで南北双方は真剣勝負を展開したが、韓国の観客は勝負の決着を望まなかったのではないかと思う。

 決勝戦は3大会連続で日朝の対決となった。日本を声援するのは30名足らずのサポータのみ。仁川の文鶴競技場は、日本にっとては完全なアウエイとなった。韓国のメディアは、観客はみな北を応援していた、と伝えている。
 試合は前掛かりになる日本の隙を北朝鮮は冷静に攻め込んでいた。試合終了間際、北朝鮮は3点目を奪い試合は決まった。3-1で、日本の連覇を北朝鮮が阻止した。

 ギクシャクした状態が続く南北関係がアジア大会を機に変わる気配が出てきた。北朝鮮は、統一の主体は北と南、海外の朝鮮民族全体であり、「わが民族同士」の立場を堅持すべきだと主張してきた。
 この「わが民族同士」の主張を韓国は無視するような姿勢で、国連では核開発や人権問題で北朝鮮を非難してきた。
 しかし、競技場では、南北がごく自然に勝利に悦び、負けを慰藉しあった。これは、同じ民族にとってありふれた光景かもしれない。

 北朝鮮はアジア大会閉会式に軍総政治局長で国防委員会副委員長の黄炳瑞氏を急きょ派遣した。崔竜海・国家体育指導委員長、金養建・党書記も同行している。
 韓国の金寛鎮国家安保室長、柳吉在統一相と会談した。朴槿恵政権誕生以来、最も高位の南北会談となった。世界は南北関係改善の転換点になるのではと注視している。

        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

日朝子供絵画展とその背景     (2014年10月6日)



 日本と北朝鮮の子どもたちが、平和の願いを込めて描いた絵の展示会が平壌で開かれ、約100の作品が展示された。これまで作品を出品した日本の青年と在日朝鮮人の青年らが、現地の若者たちと交流した。

 展示会の開催は、2001年から始まったが、冷え切った日朝関係を反映して8年間も中断していた。それが再開された背景には5月のストックホルムでの日朝合意とそれによる関係改善への期待があるとみられる。

 展示会の主催者は 、日本側は非政府(NGO)組織「南北コリアと日本のともだち展」、北朝鮮側は朝鮮対外文化連絡協会(対文協)である。対文協は北朝鮮外務省の外郭団体だから、北朝鮮の対日政策を色濃く反映しているとみられる。

 「日朝子供絵画展」の再開は 日朝関係が正常化に向けて再構築されるような環境が整ったことを意味する。

 しかし、ここにきて「夏の終わりから秋の始めに出てくる(拉致問題などの中間報告)」を巡り、 同床異夢の感が出始めている。

 子供たちの絵には邪心がない。無邪気で率直に友好を願う心が描かれている。国境を越えて友達と交流したいという子供たちの夢を実現する日が来ることを願いたい。


      (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

経済制裁下のグルメ            (2014年10月1日)


15cmの貝も北朝鮮ではハマグリの一種


日本のハマグリは平均5〜6p

 何のために経済制裁をするのか。制裁を受ける方だけでなく、結局は制裁を発動する方も痛手を受けるケースが多いと感じる。
 日本は北朝鮮に対して経済制裁を続けている。両国間の貿易はほとんどない。せっかくの北朝鮮の海の幸、山の珍味に舌鼓を打てないのは残念である。個人的なことでなくても、日本の対北朝鮮貿易会社は海産物等を輸入できない。きっと経営難であろう。

 一方、北朝鮮側は輸出先を日本から中国など他国にシフトすれば済む話だ。むしろ制裁を科した日本が苦しんでいるのかもしれない。
 そんな折り、食欲の秋を刺激する話が北から届いた。いま北朝鮮では「大漁」という言葉が市民の会話でよく聞かれる。金正恩第1書記は水産部門の現地指導に力を注ぎ、漁業の発展と漁業労働の革新を強調しているという。

 近代的な漁船が建造され、水産拠点(水産事業所など)の建設が急ピッチで進んでいる。この政策の反映なのか、 人気楽団・牡丹峰楽団の「大漁歌」という曲が流行の兆しをみせているという。

 日本が経済制裁を続ける中で、北朝鮮の食生活は逆に豊かになっている面もある。平壌市内に流通するハマグリにまつわる話。
 平壌市内のレストランではキムチと同じぐらい、ハマグリは定番メニューだという。市内の光復通りにはハマグリ焼きで有名な屋台がある。黄海(西海)で採れた貝、15センチにもなる大きな貝だが、現地ではハマグリの一種だと言う。この貝を8段階の洗浄工程で砂出しをする。そして、練炭にのせる。焼き貝の香りが充満し、食欲を刺激する。
 この貝を肴に、焼酎、ビールを豪快に飲む。ビールは「金剛」ブランドの生ビールと黒ビールが合う。
 平均して女性は、この“ジャンボ”貝2個でお腹一杯になるらしい。時には20個も平らげる女性がいて、「貝の食神」と崇められるとのこと。
 夕方、屋台の300席余りのテーブルは、仕事を終えた男たち、夫婦や家族連れで瞬く間に満席になる。

 経済制裁下で「食」を堪能し、スポーツの国際競技での勝利に湧き、レジャーを楽しむ、これが北朝鮮の現実だと、この国民はほくそ笑んでいるかもしれない。

        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

球技とユニフォーム            (2014年9月28日)



 スポーツの振興に力を注ぐ北朝鮮。サッカー・U-16アジア選手権(タイで開催)で北朝鮮は韓国に2-1の逆転勝利で優勝した。代表チームは23日に凱旋帰国したが、北朝鮮国内は女子サッカーW杯・U-20の準々決勝で米国に勝利した快挙に続き、大いに盛り上がった。

 北朝鮮がお家芸とするスポーツはサッカーと格闘技である。格闘技はそれなりの施設を必要とするが、サッカーやバレーボールなどの球技はボールと広場があればどこでも気軽に楽しめる。
 いまサッカーやバレーボール、卓球などが身近なスポーツになり、市民はこれらの球技を楽しみ、 仲間たちとの試合を心待ちにしているという。

 平壌市内では、3年前からバレーボール、テニス、バスケットボールのコートが新設された。日曜・休日は言うまでもなく、平日でも球技施設はにぎわっているようだ。
 また、祝日や記念日には会社や企業、組織ごとにスポーツ大会が開かれる。それぞれが威信をかけて試合に臨むという。このため、各競技で「有能な」選手が選ばれ、試合が行われてきた。しかし、この慣例も変わり、いまでは誰もが試合に参加し、特に最近は女性の試合参加が急増しているという。
 女性のスポーツへの関心が高まり、自らが競技を楽しむだけでなく暮らしの中でスポーツを観る時間が増えている。サッカーに特に関心を持っていなかった女性がワールドカップを観戦し、国内の試合結果にも興味を持ち始めたという。

 最後に話は少し脱線…。最近、女性の球技のユニフォームは、肌の露出度が高くなっていると感じる。テニス、ゴルフのプロトーナメント観戦の楽しみの一つは華やかなユニフォーム姿である。近頃は、バトミントン、卓球なども鮮やかなデザインのものが多い。
 北朝鮮から届く便りでは、普段は仕事着、作業服に身を包む北の女性たちも、仲間たちとの試合になると、流行のユニフォームに着替えるとのこと。テニス、卓球、バレーボール、バトミントンなどの競技で北の女性たちが世界の男性の目を引き付ける日はそう遠くないだろう。

        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

羅先経済特区への期待      (2014年9月19日)




ラジンホテル
 北朝鮮の経済改革に対する姿勢は、このコーナーで何度か紹介してきた。8月1日には、最近の政策の一つが、社会主義企業責任制と勤労者担当責任制であることを掲載した。
 金正恩第一書記の指導体制になり、変わったと感じるのは、この一連の経済政策である。かつては、精神・思想論をからませた大衆動員で経済発展を図るものだった。しかし、米国の経済封鎖が続く中で、資材や資金が十分とはいえず、精神・思想を発揚させる経済政策はひずみを生み、成果はなかなか上がらない傾向がある。

 近年、金正恩第一書記が打出す経済政策は、精神・思想論だけでなく、グローバルに視野を広げ、海外の資金、技術導入を狙っているようだ。去年 5月、経済特区設置のための経済開発区法を制定。
10月には経済特区開発のための民間団体・朝鮮経済開発協会を発足させた。
 経済特区は言うまでもなく、外国資本を引き入れ、海外の先端技術を取り込むものだ。北朝鮮がいま熱心に開発を進めているのは、北東部の羅先(ラソン)地域である。

 ここで羅先の歴史を振り返ると、日本統治時代には羅津(ラジン)と雄基(ウンギ)という2つの町だった。戦後はソ連、中国との貿易がわずかに賑わいをみせる地域だったようだ。
 1981年、朝鮮人民革命軍が対日戦で最初に祖国に戻った場所であることを記念して、雄基を先鋒(ソンボン)と改名。1993年になると、国連開発計画(UNDP)の主導で、この地域を北東アジアの玄関とし
て、国際貿易地帯として開発する豆満江地域開発計画が動き出す。
 この一環で「羅津・先鋒経済貿易地帯」として羅津 - 先鋒直轄市となり、2000年8月、羅津-先鋒の地名が「羅先」に改称された。
 去年12月、羅先経済貿易地帯法の制定を発表し、朝鮮中央通信は、特区への進出企業に大きな便宜を図るものだ伝えた。特に企業の関心が高い金融面で「合法的な利潤と利子、利益配当金、賃貸料、サービス料などで得た所得を、無制限で海外に送金できる」という。羅先経済特区での企業活動を、法的、制度的に保証したようだ。
 羅先で投資誘致専門家として活動している経済協助局の金哲号課長は、「羅先経済貿易地帯法に銘記されるすべての条項が最大限充分に遵守されている。経済開発区に対する投資が円満に進行できる様に充分に考慮したのだ」と胸を張る。
 また、ある経済関係者は、「ミャンマーのTiwara経済特区よりも制度的には整っている。あとは日本の企業が進出できるような状況が整うかだ」と、期待と不安を打ち明けた。

      (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


北の企業が求める人材          (2014年9月14日)



金正淑平壌紡織工場の総経理

 北朝鮮の経済動向を注視していると、「人民の生活向上」を主要課題としていることがうかがえる。8月7日の労働新聞は、平壌市内の靴下工場を現地視察した金正恩第1書記が「経営戦略と企業戦略を正しく立て直せ。生産工程の現代化をもっと高い水準で実現し、技術準備や製品生産・包装・販売に至るすべての生産組織と経営活動を改善しなければならない」と強調した。

 経営・企業戦略という表現は、これまで北朝鮮では西欧資本主義式なものとして回避されてきた言葉である。しかし、金正恩第一書記の現地指導では、工場支配人などの管理者と労働者の意識を変えさせるため、言葉のしがらみにはとらわていないようだ。
 実際、金正恩第一書記の現地視察を受けた金正淑平壌紡織工場の総経理は、「今の時期、金正恩元首が要求する経営・企業戦略は、国家経済の発展戦略に基づき自分たちの工場が適応していくことだ。これを実現するために工場の経済管理幹部は、最新の経済・技術の知識を同時に理解できる専門家でなければならない」と話している。

 北朝鮮ではこれまで、空虚に響きがちなスローガンが多かった。しかし、最近の標語は現実的で、グローバルは視野に立つものが多いと感じる。
 「最尖端を突破する」もその一つだ。このスローガンが目指すものは、視野を世界に広げ、海外の最先端技術と知識を吸収し乗り越えるということだ。
 いま多くの工場、企業所で求められている人材は、外国語を理解し、知識吸収に貪欲な経済管理者、技術者だという。

        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


ミサイルとシュート弾の脅威          (2014年8月20日)




2014FIFA U-20女子W杯
北朝鮮 はPK戦で米国に勝利(8月16日)

 北朝鮮は、2つのことで米国に対する自信を深めている。
 一つ目はミサイル・ロケットの発射技術である。ローマ法王が韓国を訪れた14日、北朝鮮は「超精密化された戦術ロケット弾」(朝鮮中央通信)を発射した。その2日後、カナダで開かれている2014年・U-20女子サッカーW杯の準々決勝で米国を打ち破った。二つ目の「自信」は、この女子サッカーである。

 サッカーの競技人口は2億7000万人といわれ、世界でもっとも普及している。ファン・観客の興奮度もナンバーワンの熱いスポーツだろう。サッカーの試合がきっかけで戦争した国もあるほどだ(エルサルバドルと ホンジュラス)。

 女子サッカーといえば2011年、日本が米国をPK戦の末に優勝した時の熱気は今も残る。米国女子チームはFIFAのランキングで1位を保ち続けている。(日本女子は3位)その米国相手にランキング9位の北朝鮮が勝利を収めた。北朝鮮は狂喜に包まれたに違いない。
  北朝鮮による断続的なミサイル・ロケット砲の発射がアメリカに脅威を感じさせている中で、今度はサッカーボールが超大国・アメリカの自尊心を打ち砕いたことになる。

 金正恩第一書記の動向報道を注視していると、生産現場と軍事視察以外にスポーツ関係への指導・視察が見受けられる。ロケット砲の発射の2日前には、 韓国・仁川のアジア大会(9月19日開幕)に出場する女子サッカー代表の練習試合を観戦していた。
 北朝鮮は軍事大国とスポーツ強国を同時に目指しているように思える。言い換えれば、ミサイル・砲弾をサッカーボールのように精密にコントロールし、サッカーボールをミサイル・砲弾のように相手国に打ち込むということか。その相手国は米国を念頭に置いている。
 日朝はいま、「行方不明者調査」でハーフタイムの時間かも知れないが、北朝鮮は試合再開の備えを怠っていないだろう。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

もつれ合う東アジアの結びつき  (2014年8月3日)




朝・露 合同野外演奏会
 外交交渉、外交関係を深読みするのは難しい。冷戦時代は東西陣営に別れ、基本的には大きな枠組みがあった。いまそれが崩れ、民族、
宗教、歴史、文化といった多様な因子が絡みあいながら紛争・対立が起きている。

 北朝鮮の外交でも、従来の中、露などの「友好国」と米、日、韓の
「適性国」といった大枠の分類が崩れていると感じる。もちろん、北朝鮮外交で重要な地位を占めているのが、中、露であることは間違いないが、それが永遠に続く保証はない。

 中国の習近平主席は、北朝鮮より先に韓国を訪問したことで、中朝と中韓関係に波紋を投げかけた。北朝鮮は面子を潰されただろう。
しかし、北朝鮮がこの屈辱に黙って耐えるとは思えない。ここにきて、ロシアとの友好を深めている。最近、ロシアの軍楽隊が訪朝し、平壌で北朝鮮の軍楽隊と合同の野外演奏会を披露した。朝・露両国は歴史的にも結びつが深いだけに、ロシアの軍楽隊は平壌市民から熱烈な歓迎を受けた。

 平壌市内の各レストランではこれまでの中国系の音楽に代わり、ロシア系音楽が流されているという。
 また、市民にはロシア歌謡をマスターすることが奨励されているとの話も伝わってくる。

 中国のトップが北朝鮮より先に韓国のトップに握手の手を差し出したとき、北朝鮮はロシアとの交流を深め、没交渉だった日朝交渉を再開させた。日朝に関しては米・韓が警戒心を強めている。
 「人と人の交渉」、「トップの個性と個性」が反映する外交は複雑怪奇に変転するものかもしれない。
 (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

北朝鮮の経済改革            (2014年8月1日)

食品工場を視察する金正恩第一書記



真新しいレストラン(平壌)

 いま北朝鮮政府が力を注ぐ経済政策は、「社会主義企業責任制と勤労者担当責任制」だという。説明を求めると、社会主義企業責任制については、「すべての企業(工場、企業所、協同団体)が独自的な経営権を100%行使できるように必要なすべてが条件が保障されてい
る。
 各企業は諮問サービス機関の協力のもと、経済的な相場を科学的に見通し、注文、契約によって自らの合理的な計画を作成し、制限なく生産手配と人数調節、資金造成・支出を行うなど自分の企業のすべての活動を責任をもって独自的に行っている。」との答えが返ってき
た。要するに企業の独立採算制を認めるということか。

 また、勤労者担当責任制は、「…各企業は機械設備と土地、施設物などの財産を勤労者に固定的に担当させ、主人らしく、そして競争的に管理・利用するようにしている…」だそうだ。
 これは労働者に、これまでのような「親方、藍紅色旗(北朝鮮の国旗)」ではなく、背後には国家が控えているから失業の心配はない、といった甘い認識を捨てろということだろう。

 その結果、不振を極めてきたサービス業が大きく改善され、水産部門では、生産量が過去の業績から数十倍に飛躍したとの報告もある。そして、もっとも力を入れているのは科学技術分野の人材育成だと言われている。

 中国は「社会主義市場経済」なる理論を展開し、社会主義を堅持しながらも市場経済を導入して経済の活性化を図った。中国式ではないか、と問うと強く否定するが、経済システムの充実、改革に真剣に取組んでいるのは間違いないようだ。

 (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

見極め困難な北朝鮮の軍事演習と外交  (2014年7月27日)




 北朝鮮は日本海に向けてミサイルやロケット砲弾の発射を続けている。北朝鮮自から「ロケット発射訓練」、「島上陸作戦訓練」など物騒な名称を付け、軍事演習であることをメディアに公表している。

 金正恩第一書記が頻繁にこれらの軍事演習を視察したことも報じている。一連の演習・訓練は、日・韓・中の周辺国だけでなく、地理的に遠い米国も強い警戒感を抱いた。

 朝鮮半島での軍事演習は北朝鮮だけが実施している訳ではない。韓国では米軍が主導する米韓合同軍事演習は、定例行事のように行われている。

 これに対し、北朝鮮は、強く反発してきた。昨年は米韓合同軍事演習にF-22ステルス戦闘機やB-52戦略爆撃機、ステルス戦略爆撃機B-2が投入されると、「次に出動したら、軍事的対応を取る」(3月19日北朝鮮外務省声明)と警告した。

 今年、米韓の大規模軍事演習は2月に行われ、さらに7月、8月に実施される。最近の一連の北朝鮮の演習は7月、8月の米韓合同演習への対抗処置とみるべきだろう。

 姜錫柱・朝鮮労働党書記は7月10日、訪朝したアントニオ猪木・参議院議員一行に、「米韓に対する抗議の表示としてミサイルを撃った」と説明している。

 この変わりぶりは軍事面だけでない。外交では先んじて、その兆候を見せている。例えば日朝。これまで、「拉致問題は解決済み」の頑なな姿勢を堅持してきた。それが一転して日朝交渉が頻繁に開催されるようになった。南北関係でも、北朝鮮は南に対して誹謗と中傷だけでなく、融和攻勢も仕掛けている。北朝鮮の硬軟取り混ぜた外交政策と軍事的対応に、各国政府は翻弄されているようだ。
                     

     (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

「血宮不老精」/血栓症予防サプリメント   (2014年7月10日)

エリコン臨床研究所・臨床検討室
林 日鮮 博士  

 血栓症は、血管内にできた血の固まりである「血栓」が血管につまる病気だ。脳の動脈に血栓ができると脳梗塞を引き起こし、心臓の動脈なら心筋梗塞を誘発する。心筋梗塞、脳梗塞などの血栓症の発生率は癌(がん)以上に高く、人類最大の難敵と言える。血液循環障害の患者は、世界の人口の60%という数字もある。

 血栓症予防としては、食生活や運動などの生活習慣に気をつけることが指摘されている。食生活で言えば、血液をサラサラにする食品が注目されている。
 特に、「ネバネバ食品」は血栓を溶かす酵素が含まれているとされ、「納豆」のなかに含まれるナットウキナーゼは、血栓をふせぐ効果が高いようだ。

 「納豆」といえば、以前この欄で紹介した(北朝鮮投資の魅力とリスク)北朝鮮の富強製薬会社は、納豆から抽出した血栓溶解物質を取りこんだ健康補助食品の開発に成功したとの話だ。血栓溶解に効果のあるサプリメントらしい。「血宮不老精」と名づけられた。
 サプリメントは、一瓶に180カプセル(36グラム)詰まっているが、この一瓶を製造するのに北朝鮮で栽培した豆100sを使うという。

 血栓溶解物質は、一方で出血を止める血栓までも溶かす可能性があり、飲用には細心の注意が必要である。しかし、エリコン臨床研究所・臨床検討室の林日鮮(リムイルソン)博士は「血宮不老精」は出血の心配なしに食べられる健康食品と太鼓判を押す。「血宮不老精」の臨床研究結果は、ドイツ、イギリス、日本など各国の学会と病院から関心を集めているという。

                       (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

経済制裁下の国際商品展覧会(1)  (2014年5月27日)

 国連の経済制裁は依然として続き、緊張緩和の方向に進むかと期待された南北関係には好転の気配はなく、北朝鮮経済は厳しい状態だ。このなかで、第17回国際商品展覧会が、5月12日〜17日に平壌で開催された。
 外資導入、貿易で経済難を打開したい思惑があるだろう。開幕式には姜錫柱副首相、李竜男貿易相らが出席し、「展示会が地域経済の発展を推し進める契機になることを期待している」と述べた。

 日本企業は経済制裁で対北朝鮮貿易を止めているため参加していないが、北朝鮮のほか中国、台湾、英国、ドイツ、キューバ、イタリア、マレーシアなどの国・地域から310社以上が参加した。電子製品や日用生活用品、食品などが出品され、展示ブースでは熱い商談が行われていた。

 国際商品展覧会に初めて参加した台湾・キング・トニー社(King Tony Tools CO.LTD)のビンセント・ライ氏(Vincent Lai,Marketing Division Vice General Manager)に質問し
た。
Q:どのような経緯で展覧会に参加したのか?
A:(世界各地で催される展覧会への参加を仲介する)専門会社を通じてこの展覧会に参加しました。
Q:参加の目的は?
A:わが社は中国、フランス、スペイン、ドイツ、オランダ、アメリカなどに事務所を置き、世界120ヶ国に製品を販売しています。さらに輸出先を探すため平壌国際商品展覧会に来ました。
Q:成果は?
A:開幕初日からわが社との協力を積極的に呼びかけてきた会社もありました。すでに10社以上と名刺交換をしました。いま、展示しているサンプルの工具はほとんど売り切です。わが社の製品を購買、使用しようとするお客さんはたくさんいます。今回の出店目的はほとんど達成できました。平壌国際商品展覧会は非常に良い展示会です。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

商品展覧会(2)   (2014年5月27日)


 北朝鮮の最先端技術に関しては、情報不足の面がある。メディアの偏見が強い日本からみると、軍事的には強力な部分があっても国民は食料不足に悩まされ、日常生活面での最先端テクノロジーは不十分との先入観がある。しかし、北朝鮮はIT技術の育成を熱心に進めてきた。故金正日総書記は、中国を訪問した際には必ずコンピューターやハイテク産業を視察している。先端技術で、経済回復をはかろうとする狙いがある。
 
 第17回国際商品展覧会で人気を集めた商品の一つがタブレット端末
「サムジヨン(三池淵)」だ。北朝鮮には3種類のタブレット端末
「アリラン」、「サムジヨン」「アチム(朝)」がある。2012年に発売され平壌市内の販売店では外国人でも200ドル前後で購入できる。
前回同様、今回も人気商品になっている「サムジヨン」を出品した、新興ITサービスセンターのアン・グァンリョン総合部員(40歳)に話を聞いた。

Q:「サムジヨン」の人気は?
A:人気は高いです。いま、わが国では各種のタブレットPCが製作、販売されています。前回の展覧会にもいろんな種類のタブレットPCを出品しました。「サムジヨン」は最も人気の高い製品でした。多くの使用者は「サムジヨン」の性能、品質を高く評価してくれています。「アリラン」などは「サムジヨン」に比べると人気は落ちます。

Q:「サムジヨン」の販売状況は?
A:今回出品したタブレットは平壌市内でも販売している製品です。
学校の友達、職場の同僚から「サムジヨン」の評判を聞き、会場を訪れた客が多いです。最初の日にも100台が完売になりました。

Q:新製品の開発も計画しているのか?
A:弊社では「サムジヨン」の性能向上に力を注いでいます。
その中で新製品の開発も進めています。いま販売中のタブレットの生産を維持しながら、より発展した製品の開発、生産を目指しています。
目標は、国際的な市場でも競争力をもつ製品の開発、生産です。

Q:新製品の出品はいつごろになる?
A:いま、開発の技術的な問題は解決しています。1〜2カ月後には(新製品の販売)できると思います。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

北朝鮮の義務教育  (2014年4月5日)



 4月1日、北朝鮮でも新学年度がスタートした。新入生は緊張と期待に膨らむ胸に赤い花をつけ、入学式だけは親と一緒に学校へ行く。入学式に付き添った親が教室では後ろから我が子を見守る。その光景は日本とそう変わらない。

 今年の入学式は例年と少し違って親たちの関心が高いという。新たな12年制義務教育がスタートするからだ。これまで、北朝鮮では11年制義務教育(幼稚園1年、小学校4年、中学校6年)をとっていたが、小学教育を1年増やし5年制にした。中学(中等)教育も初級と高級に分けた。つまり、幼稚園の1年を日本流の小学1年とみると、小学6年、中学3年、高校3年となり、高校までが義務教育ということだ。日本より3年も長い義務教育を施すことになる。北朝鮮が人材育成に相当な力を注いでいる証といえる。

 「朝鮮のために学ぼう!」。このスローガンは殆どの学校に掲げられ、児童、生徒はこの言葉を肝に銘じ、勉強しているに違いない。ある小学新入生(女子)は入学式で「これから熱心に勉強してりっぱな科学者になり、金正恩元帥を喜ばせる」と話した。またある母親は「うちの子は音楽が好き。りっぱな芸術家に育て金正恩元帥のご配慮に報いたい」と語る。
 自分のためでなく、国家や指導者のために学ぶ、学ばせる。外国人が違和感を持っても北朝鮮の教育方針は明確だ。
※北朝鮮義務教育の歩み
 ・1956年8月、アジアで初めて初等義務教育を実施
  (4年制―小学校4年)
 ・1958年11月1日、中等義務教育を実施
  (7年制―小学校4年、初級中学校3年)
 ・1967年4月、中等一般教育と基礎技術教育、教育と生産労働を
  結合させた9年制技術義務教育の実施を決定
  (9年制―小学校4年、中学校5年)
 ・1972年9月、世界で初めて全般的11年制義務教育を実施
  (11年制―幼稚園1年、小学校4年、中学校6年)
 ・2012年、最高人民会議第12期第6回会議で12年制義務教育実施を発布

                        (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

北朝鮮式スポーツ選手強化方法  (2014年4月4日)


北朝鮮女子サッカーチーム
  2020年の東京オリンピックを控え日本ではスポーツ選手の強化策が課題になっている。2011年の世界各国の年間強化費を調べてみると、ドイツ263億円、中国304億円、韓国149億円などに対して日本は185億円。この数字は、「名誉」だけでは選手の奮闘を促すのは難しく、やはり選手への「投資」が必要、ということを物語る。

 北朝鮮でも同じようだ。北朝鮮の中央テレビを観て感じたことだが、北朝鮮のドキュメンタリーは最高指導者を称賛する内容が多い。生産部門や軍関係の現地指導を中心としたドキュメンタリーの中で、最近は金正恩第1書記がスポーツ部門を指導する映像も増えてきた。
 去年(2013年)の国際大会で収めた成果を誇示し、さらなる躍進を促すのが狙いだろう。「国家級受勲」という名誉とともに物質的報酬にも重点を置き、選手の意欲を刺激しているドキュメンタリーが目立つ。
 第52回世界卓球選手権大会で優勝したキム・ジョン、キム・ヒョッボン選手には乗用車と高級マンションが贈られている。これが北朝鮮式のスポーツ選手刺激方法だ。

 去年、北朝鮮は70余りの国際競技に参加している。北朝鮮の発表では金164、銀129、銅97のメダル獲得となっている。北朝鮮式スポーツ選手刺激方法がこれからどのような結果を示すか、今後の国際大会に注目したい。

                         (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )

北朝鮮の食糧問題と農業政策   (2014年3月31日)
 

 金正恩第1書記は、「新年の辞」で「党内に潜んでいた宗派の汚物を除去…」と述べ、国内態勢の引き締めをはかった他、対外政策では対南関係改善の姿勢が注目を集めた。しかし、経済関係者が関心を寄せたのは、「農業部門が先頭に立って革新ののろしを高く掲げるべきだ」という発言だ。

 食糧問題の解決を「新年の課題」と位置づけたのは異例のことである。さらに、「農業部門は社会主義守護戦の最前線だ」という表現も今年初めて登場した。食糧問題を今年中に解決しようとする、強い決意の表れととらえてよい。
 2月には北朝鮮で初の「農業分組長大会」が開催された。これまで全国農業大会は数回開かれたことがあるが、協同農場の最末端組織の責任者である分組長を集めて会議を開くのは今回が初めてだ。この大会を契機に今年から分組管理制の実施がさらに強化されると見られ
る。
 さらに、分組管理制が家族単位に変更され、農民の生産意欲を刺激するために、現物分配制を見直しするとの指摘もある。今年、北朝鮮は食糧問題解決のため、これまで余り手を付けてこなかった農業政策に大胆に取組む予感がする。

                       (アジア・ウオッチ・ネットワーク 北朝鮮取材班 )


Asia-Watch Network

   Bangkok THAI
   Kuala Lumpur MALAYSIA