朝鮮中央通信(KCNA)WEBサイトから
米国のトランプ大統領が、6月30日、朝鮮半島の南北軍事境界線上にある板門店で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談した。トランプ氏は現職の米大統領として、初めて北朝鮮の領内に足を踏み入れた。
朝鮮戦争が始まったのは1950年の6月。対立の象徴である板門店における宿敵のトップ同士の出会いに世界は驚いた。
トランプ大統領は、金正恩委員長と軍事境界線をはさみ、握手を交わした後、北朝鮮側に入った。そのあとトランプ大統領と金正恩委員長は、韓国の文在寅大統領も加わり、韓国側施設「自由の家」に。米・朝・韓の首脳が一堂に会するのは初めてである。
かつて板門店の付近にはノル門里(ノルムンニ)という名の村が存在していたという。ノル門里は「板で出来た門のある村」という意味で、朝鮮戦争休戦協定の協議が行われていた1951年に、中国の代表者が会場を探しやすくする目的で近くの店に設置した看板名に由来している、という。
軍事境界線は南北朝鮮の「分断ライン」で、板門店は、唯一、双方が接触できる場だ。会議場が置かれ、北側には「板門閣」が南側に「自由の家」と「平和の家」が設置されている。
日本の新聞社のソウル特派員時代、この板門店で軍事境界線を往来したことが幾度かある。1990年代の前半は、南北融和のムードが漂い、首相会談がソウル、平壌で交互に開かれた。
会談前の実務者協議は板門店の南北の施設で行われ、日本を含め、在ソウルの特派員が同行・往来した。朝鮮戦争で北地域において戦死した国連軍兵士(米軍中心で豪・比・タイなども参戦)の遺骨返還式もたびたび行われ、軍事境界線をまたいで取材したものだった。
また、ここを観光客として、南北両側の施設から1週間足らずのうちにそれぞれ眺めたこともある。北京経由で平壌に入り、陸路、板門店に向かった。北側から、1週間前に訪れた南側の施設を眺めた。今度は、軍事境界線の向こうから米韓兵が双眼鏡などでこちらを監視している。奇妙な感じだった。
こうした個人的感慨もあるが、板門店は、やはり特殊な場である。気持ちを高揚させる。トランプ大統領の親書やツイッターなどを通じて電撃的な首脳会談が実現し、停滞する非核化交渉の再開に向け、米朝双方で交渉チームを作り、協議を始めることで合意。トランプ大統領は金正恩委員長をホワイトハウスに、金正恩委員長は平壌にトランプ大統領を招待するとそれぞれ伝えたという。
一方、この電撃的な米朝首脳会談で全く存在感がなかったのが日本だ。「無条件で金正恩委員長と向き合う」と日朝首脳会談をアピールしているものの「(安倍総理の)面の皮はクマの足の裏のように厚い」と以前よりも強い反発を受けている。
5月の日米首脳会談で「トランプ大統領からも『全面的に支持する』『あらゆる支援を惜しまない』との力強い支持をいただいた」(共同声明)と誇らしげに語った言葉が、板門店の米朝首脳会談で一挙に崩れ落ちた。